プログラム
セッション1 脳の酸素を可視化する(10:05-11:25)
最先端脳科学技術-酸素脳イメージング(COE)-で脳の中の酸素の使い方を検証します。
◆基調講演「酸素と血流でどのように脳活性を表現できるか?」
(加藤俊徳/脳の学校代表)
◇脳組織酸素輸送シミュレーションによるNIRSデータの分析とそれに基づく脳機能評価方法の考案
(大山和則/慶応義塾大学)
◇COEを用いた点滅するチェッカーボード視覚刺激に対する脳酸素交換の計測
(内田淳/株式会社脳の学校)
◇和文/英文タイピング遂行時に見られる脳酸素反応の特徴と差異
(辰巳奈央/慶応義塾大学)
◇COEで見る空書の脳機能メカニズム~想起・伝達・文字特性による検討~
(品田あやの/慶応義塾大学)
セッション2 脳から考えるリハビリ(11:35-12:45)
体の制御は脳から始まります。21世紀の新しいリハビリテーションの可能性を探ります。
◇自己運動錯覚誘起中の皮質運動野興奮性について
(金子文成/独立行政法人産業技術総合研究所)
◇運動強度の違いが運動関連脳磁場に及ぼす影響
(大西秀明/新潟医療福祉大学)
◇筋疲労時における大脳皮質活動について―近赤外分光法を利用した検討―
(登内靖子・大西秀明/新潟医療福祉大学)
◇右指伸展運動時における大脳皮質血流変化について
(古沢アドリアネ明美/新潟医療福祉大学)
セッション3 脳と健康(13:30-15:10)
医療・福祉・教育を脳から捉えられる時代になりました。生活と脳を結びつける知識をもとに、脳の健康を考えます。
◆招待講演「健康寿命を延長させる生活習慣」
(遠藤明/昭和大学小児科)
◇乳幼児の睡眠時における死の危険から守る研究
(福水道郎/東京都立東部療育センター)
◇歯科治療はそんなに怖いですか
(笠原紳/東北大学病院附属歯科医療センター)
◇失敗しない水泳トレーニングの導入~信頼関係を作る脳環境~
(湯澤良隆/アクティブ代表)
◇予防的アセスメント
(青木徳彦/LLPアースアカデミー)
セッション4 脳科学の応用(15:20-16:30)
脳はあらゆる分野で必要不可欠なキーワードです。脳酸素計測が応用を可能にします。
◇光脳機能計測装置のニーズと応用分野の拡大
(井上正雄/島津製作所)
◇functional NIRSによる太極拳の前頭葉の血流に与える影響の検討
(原田雅史/徳島大学医学部診療放射線技術学講座)
◇前頭葉機能とケアとの関係に関する研究-健康生成を促すタッチ技術-
(本江朝美/共立女子短期大学)
◇マウスピース「快快」装着時における脳番地効果
(萩原秀紀/萩原カイロプラクティック)
抄録集
※掲載の許可をいただいた発表抄録のみ掲載しております。
基調講演「酸素と血流でどのように脳活性を表現できるか?」
加藤俊徳/脳の学校代表
脳を外見でしか判断できなかった時代には、心理学が発達しました。1980年代、宗教ブームとともに、精神世界に関するブームが起こりました。現代は、脳ブームの時代と言われ「脳を鍛える」などと冠した書籍やゲームや脳トレーニングの商品が数多く見られるようになりました。精神やこころを鍛える、こころと精神のトレーニングというより「脳」を冠した方が、より科学的な事実に基づいている印象が与えられます。
この脳ブームとともに使用されている言葉に「脳の活性化(Brain Activation)」があります。脳の活性化は、脳機能イメージングの研究の高まりとともに使用され、何かの課題を実行して、その課題に応じて、脳反応を検出する一連の計測をアクチベーション・スタディーといわれるようになりました。ところが、これらの脳機能イメージングの大半が怪しいものであるということが1990年代後半に研究者のなかでささやかれ始めました。ところが日本では、その怪しいという部分が「脳を鍛える」ブームとなって現れました。
真っ赤に染まった脳の活性化を示した脳機能画像と脳トレ課題を一緒に並べて表示すると、あたかも脳トレ課題とその脳機能画像とが直接的に密接な関係があり、効果的な印象を与えるためです。実際にこれを、脳科学者や医者が説明すると信頼度がさらに向上するというシナリオを描くことができます。
ここには重大な問題点が3つありました。
一つは、脳機能画像を説明しているほとんどの専門家が、その脳機能画像法を開発したのではなく、脳計測法のユーザーとして、結果を得るための使用だったということです。そのために、脳画像法の技術上の問題点をやすやすと無視することができるということです。
二つ目は、脳機能イメージングと言いながら、実際は、脳の外、脳を取り巻く血管に流れ込んだ血液を検出していたという事実です。いわば、脳機能イメージングのほとんどが、脳組織の反応ではなく、静脈性下水道効果と呼ばれる脳外反応を、脳の活性化と誤認していたのです。
脳機能イメージングの中でも汎用されたfMRIと呼ばれる技術は、細い静脈反応を検出していると学術上も記述されながら、我々、専門研究者の中でも、1990年代前半には、まだ、脳外イメージングという認識に乏しかったのです。そして、今尚、この脳外反応が、脳反応として誤診される問題点にも無関心である場合が少なくありません。
三つ目は、従来の脳機能イメージングは、一人一人の「脳個性」を検出して表現できなかったことです。7-8人の結果をまとめて、同じような脳反応分布を表示することで、脳の活性化に対する一般性を強化しようと試みていました。しかし、このような共通性が、実際の脳の働きと直接結びつくものであるかは定かではありません。
従来、これらの脳の活性化画像を用いて、この商品やこんな脳トレは、脳にいいという謳い文句だったのではないでしょうか?
このような脳機能計測法の問題点は、市販されている光を用いたNIRS脳機能計測装置でも例外ではありませんでした。
これらの3つの問題を解決したのが、脳の学校が開発したCOE(シーオーイー)酸素脳イメージング法です。酸素と血流を同時に計測して脳の活性化を定量的に捉える技術です。
19世紀から100年以上、脳の活性化を脳血流の変化で捉えてきましたが、酸素の使い方、酸素消費を脳血流と同時に見ることで、「個性を持った脳の活性化」を検出することに成功しています。この技術は、個々の商品や個人個人の能力評価にも対応ができています。心理学の延長上の脳ブームから、脳そのものから生活に結びつく脳カルチャーの形成が望まれます。
脳組織酸素輸送シミュレーションによるNIRSデータの分析とそれに基づく脳機能評価方法の考案
大山和則/慶応義塾大学
近年,多方面でNIRSを用いた脳機能測定が行われている.NIRSは脳血液中の二種類のヘモグロビン濃度変化量を測定できるにもかかわらず,一般には一種類のヘモグロビン量しか脳機能評価に用いられていない.これは,神経活動が各種ヘモグロビン量に与える影響が必ずしも明確でないことが原因であると考えられる.そこで本研究では,まず血管と組織から構成される脳組織酸素輸送モデルを用いて,ヘモグロビン動態の過渡応答シミュレーションを行うことにより,神経活動とヘモグロビン動態の関係を調べた.さらに,その結果を踏まえた上で,正規直交化分解を用いた実測データの分析を行い,二種類のヘモグロビン量を活用した神経活動評価が行える可能性を示した.
COEを用いた点滅するチェッカーボード視覚刺激に対する脳酸素交換の計測
内田淳/株式会社脳の学校
脳酸素交換マッピング(cerebral functional mapping of oxygen exchange:COE)は酸素交換に着目することで脳機能イメージングの精度を向上させる手法であるが,これまで視覚刺激に対しては行われていなかった.そこで,本研究では,COEを用いて視覚刺激に対する脳酸素交換の計測を行った.具体的には,点滅するチェッカーボード刺激を用い,視覚野の脳酸素交換を測定した.実験1では,1Hzから12Hzの周波数で点滅する刺激を用い,周波数による酸素交換の変化を調べた.また,実験2では,刺激を右視野または左視野に提示し,視野の違いにおける酸素交換の変化を調べた.結果については当日報告する.
自己運動錯覚誘起中の皮質運動野興奮性について
金子文成/独立行政法人産業技術総合研究所 人間福祉医工学研究部門
本研究の目的は,視覚情報呈示に伴う手指の自己運動錯覚が皮質運動野の興奮性に与える影響を明らかにすることである。実験条件は,1)安静条件,2)第三者の示指が外転運動もしくは内転運動している動画を被検者に呈示し,自己運動錯覚を誘起する錯覚条件,3)同様の動画を呈示するが,運動錯覚が誘起されない非錯覚条件,4)立体文字が動く映像を呈示した,シャム条件の4種類であった。これらの条件下で,皮質運動野に対して経頭蓋磁気刺激を実施し,運動誘発電位(MEP)の振幅変化から,皮質脊髄路興奮性を調べた。その結果,動画内の運動に関わる筋においては錯覚条件で有意に振幅が増大し,その変化は方向依存的であった。
今回の発表では,さらに同条件で記録した脳酸素動態に関する結果を供覧する。
運動強度の違いが運動関連脳磁場に及ぼす影響
大西秀明/新潟医療福祉大学 理学療法学科
本研究の目的は,視覚情報呈示に伴う手指の自己運動錯覚が皮質運動野の興奮性に与える影響を明らかにすることである。実験条件は,1)安静条件,2)第三者の示指が外転運動もしくは内転運動している動画を被検者に呈示し,自己運動錯覚を誘起する錯覚条件,3)同様の動画を呈示するが,運動錯覚が誘起されない非錯覚条件,4)立体文字が動く映像を呈示した,シャム条件の4種類であった。これらの条件下で,皮質運動野に対して経頭蓋磁気刺激を実施し,運動誘発電位(MEP)の振幅変化から,皮質脊髄路興奮性を調べた。その結果,動画内の運動に関わる筋においては錯覚条件で有意に振幅が増大し,その変化は方向依存的であった。
今回の発表では,さらに同条件で記録した脳酸素動態に関する結果を供覧する。
筋疲労時における大脳皮質活動について―近赤外分光法を利用した検討―
登内靖子・大西秀明/新潟医療福祉大学
本研究の目的は,近赤外分光法を用いて大脳皮質の活動状態と筋疲労との関係を検討することである.対象は健常女性10名であった.使用機器は24チャネル近赤外光イメージング装置(OMM-3000,島津製作所)および筋電計一式である.課題動作は10秒間の等尺性最大掌屈運動を9セットとした.その結果,運動開始から始めの3セット(前半)に比べ,4セット目から6セット目(中間)において筋活動は減少し,大脳皮質感覚運動領野の酸素化ヘモグロビンは有意に増加した.また,数名の被験者においては脱酸素化ヘモグロビンの増加が認められた.中間から後半(7セット目から9セット目)にかけては筋活動の減少ともに酸素化ヘモグロビンも有意に減少した.本実験結果から,近赤外線分光法を利用することにより,運動時の中枢性疲労の状態を観察することが可能性であると考えられた.
歯科治療はそんなに怖いですか
笠原紳/東北大学病院附属歯科医療センター
歯に関する故事・ことわざには,奥歯に物のはさまった,歯に衣着せず,歯の浮くような,歯が立たない,歯がゆい,歯切れが悪い,歯軋りをする,など沢山あり,主にヒトの感情を表すものが多いことに気づく.古来,ヒトは恐怖や不安を感じると,歯に異常を感じたのだろう.あるいは歯の置かれた環境や疾病に非常に敏感であったのだろう.
日常,歯科臨床をしていて,歯科治療に必要以上に恐怖を持つ方,ご自分で治療方針を立てる方,何も反応しない方,いろいろいらっしゃる.そのほとんどが歯科治療に対する不安や不満をお持ちなのだろうと推測している.歯科疾患や治療における痛みや不安を定量的に評価できれば,患者さんのみならず,歯科医師自身の不安もなくなると信じ,口腔内の現象と脳の関連について研究を進めている.
予防的アセスメント
青木徳彦/LLPアースアカデミー
行動変容法の世界でも先行子操作が重んじられ事後よりも事前に視点が向けられているのに特別支援教育の現場においては、ことが発覚しどうしょうもない状態になって初めてアセスメントが実施され個別支援計画が作成されているという現実があります。今回の発表では脳の特質を前もって知ることを目的とした予防的アセスメントの必要性とその価値を私の職場での実体験と実際に予防的アセスメントを体験した家族の感想等も含め啓蒙したいと考えます。私の取り得る方法は町医者的なものですが、その頂点に存在し得るのが加藤先生がおやりになっている事だと考えます。息子が今元気に過ごせるのは町医者と子ども医療センターとの密なる連携があってこそです。脳についての不都合を感じている子ども達にも息子のような恵まれた環境を提供したいという思いで発表を決意しました。
functional NIRSによる太極拳の前頭葉の血流に与える影響の検討
原田雅史/徳島大学医学部診療放射線技術学講座
【目的】太極拳は痴呆の防止等の脳機能との関連が示唆されており、各動作における前頭葉の血流変化をfNIRSにより観察し、脳機能に及ぼす影響を検討した。
【方法】対象は十分に太極拳を経験している同意を得た健常人2名(共に女性,58±2歳,太極拳経験年数13年)である.島津社製NIRStationを用いて,前頭葉部に24chのプローブをつけ,音楽をかけながら太極拳を行った場合と,音楽なしで行った場合の24式における変化を観察した. NIRSの処理はNIRStationを用いて統計処理を行い,3DのMRI画像と重ね合わせた.
【結果・考察】
太極拳の24式のうちの一部で前頭葉の血流の増加が認められ、その他では前頭葉の部分的な血流低下が認められた。賦活部位は中前頭回,下前頭回で認められ,oxyとtotalの変化が大きい.これらの変化は二人の被検者でほぼ同様の変化であり、太極拳の所作と前頭葉の血流の増減との関連性が示唆された。音楽がない場合の方がよりoxy,totalの変化は大きく現れた.
前頭葉機能とケアとの関係に関する研究-健康生成を促すタッチ技術-
本江朝美/共立女子短期大学
ケアは病んでいる患者の健康生成を促す営みであり、その多くはタッチを通して行われる。しかしタッチによる人の反応は、個人の心のありようや人との関係性など曖昧な要素を含んでいる。そこで、個別性に対応するタッチ技術を考究する一助とするために、個別性を反映する前頭葉の酸素交換機能とタッチ技術との関係を、COE(Cerebral Oxygen Exchange)によって客観的に捉えることを目的とした。3人の健康成人女性を対象に背部にタッチを行った結果、①タッチによって、前頭野とくに超前頭前野が広汎かつ多様な酸素交換反応を示した。②なかでも健康生成力( Sense of coherence)が強い者は酸素交換が進んでいるFORCE効果パターンを、弱い者はタッチで血流が低下し、後に上昇するパターンを示した。③個人内のタッチによる反応は再現性を示した。これらより、タッチ時に前頭葉機能が使われることが明らかであり、個別性に応じたタッチケアの可能性が示唆された。
第2部 Your possibility is created in“your Brain”(完全予約制)
リングで戦い、舞台で語る。その才能はもって生まれたものなのでしょうか?
脳には個性があり、その個性は脳を育てることで開花していきます。第2部では今を活躍するゲストの脳画像MRIから、彼らの脳を解き明かし、脳の鍛錬と強化について語り合います。
ゲスト
総合格闘技パンクラス新人王MVP 吉田直輔(ヨシロックT)選手
昨年、総合格闘技パンクラスのネオブラッドトーナメントで、ウェルター級チャンピオン(新人王)に君臨し、MVPを獲得したヨシロックTこと、吉田直輔選手。吉田選手は、その美しい腹筋がCMに起用されるほど、肉体を鍛え上げてきました。すでに新人クラスではないと専門家も語る吉田選手の強さの秘密はどこにあるのでしょうか?
肉体の鍛錬だけに満足せず、試合に勝ったという結果にも満足せず、自分と向き合い、格闘家として前進する吉田選手は、常に自分の「メンタル・メンテナンス」を怠りません。吉田選手の脳画像MRIは何を語るのでしょうか?
※新人王を獲得したトーナメント戦での1枚。勇ましい吉田選手も普段は紳士で温和な好青年です。
―Your possibility is created in“your Brain” ―
あなたの未来の可能性は、あなた自身が創り続ける脳にあります。
加藤医師の新著書「脳は自分で育てられる」のエッセンス(光文社 3月下旬単行本発売予定)は、一人一人の過去・現在と未来の可能性を、脳から見つけだすことにあります。
MRIで脳個性を見分ける技術と「あなたの脳の可能性」について、今をときめくゲストと、第1部の発表者らとともに、脳の個性と未来のための脳の鍛錬について語り合いましょう。(先着順完全予約制です。)

